近年、我が国においてもライドシェア導入について社会的なテーマになっています。
実際に11月からは政府の有識者会議も実施され、12月末には一定の結論が出るようです。
ライドシェアとは何かというと、一種免許保有の一般ドライバーが、自家用車を使って乗客を有償で運送することを指します。もっと簡単に言えば白タクの一種です。白タクは現在わが国では違法ですが、それを合法化するのがライドシェアの概要です。制度化するわけですから白タクのような無法な営業ではありません。それなりの規則や行政機関のコントロール下に入るわけです。現在でも福祉有償輸送という制度がありますが、これの延長線上にあるという建付けです。但し、福祉目的ではありません。タクシー不足を補うための制度であり、且つ営利企業が運営することが可能となりますので、料金もそれなりの額(タクシーの半額から8割程度らしい)となります。
最も有名なのがウーバーです。日本ではウーバーイーツが有名ですが、食べ物を運ぶ代わりに人を運ぶ、というイメージでしょう。
さて、このライドシェアの議論と同時進行で進められているのが、2種免許の廃止や取得の簡略化についてです。
ライドシェアは一種免許で出来るのですから、タクシーが二種免許を保有する意味がなくなります。
この会議の中で、警察庁は2種免許と一種免許の運転能力の違いについて説明していまして、なるほど、と感じたので、皆さんともシェアしておきたいと思います。
警察庁はタクシーの運転をするにあたって、なぜ2種免許が必要なのか?以下のように説明しています。
①一般的に営利を目的としており、営業効率を上げようとするなどのため、1日の走行距離や輸送人員が多くなること
②乗客の指示による急な方向転換等への対応、乗客の動静確認及び安全確保等のため、通常より高度の運転技能や知識が必要
③旅客自動車による事故は多くの人命を損ないかねないこと
運転能力という事を考えた時、重要なのは上記の②だと思います。
つまり二種免許保有者は、通常より高度な運転技術が求められるわけです。この「運転技術」の中には認知機能も含まれるでしょう。
私自身も経験がありますが、乗客はよく、突然に「そこの角を曲がって」とか「そこで止めて」などと無謀な要求をします。
そんな突発的な要求に安全に応えるためには、一般ドライバー以上の迅速で的確な運転操作と、高度な認知機能が求められます。
これこそが、2種免許の意義だと警察は説明しました。
他方でライドシェアが1種免許で可能な理由は、上記②のような場面にはライドシェアは出くわさないからです。
なぜならライドシェアは流し営業をしません。アプリで迎車し、目的地も予めアプリで指定し、料金も事前に決定しますので、
急な方向転換等は起こらないからです。
ちなみに、タクシーの事故は、空車時に多発するというデータがあります。
従って、流し営業をしないライドシェアは従来のタクシーより事故が少なく、また1種免許で十分。という理屈になっています。
みなさんの患者の中にも、2種免許を持っていて更新を希望する方がいらっしゃるでしょう。
そのようなケースに出会ったとき、一体どのような運転評価が必要なのか?
警察が示した上記の文章は役に立つのではと思います。
タクシーは地域にもよりますが流し営業が基本であり、
空車時は、お客を探しながら運転することによる注意散漫や、
急に手を挙げた乗客のために急停車する、急な車線変更をする、などの機会が多く、
一般のドライバーよりもさらに高い認知機能が求められます。
このようなシチュエーションで運転するのがタクシー運転手であり、2種免許とは、そのような場面への対処出来る運転能力を獲得するための訓練を受け、なおかつ試験という選別を通った証となります。
2種免許を持つ患者の運転評価をどうすべきか?
多くの医療職の悩むところですが、是非参考にして下さい。